近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
この論文、日本の乳がん治療のターニングポイントになったようで、乳房温存療法は全乳がん手術の6割を占めるようになったのです。
村八分の役得もありました。
病棟医長を解任され、毎週2回あった他病院への出張を断られ、院内の様々な会議にも呼ばれなくなった僕は、週1~2回の外来以外は、何をしようと自由になったのです。
僕はこの自由時間を、がんの研究と執筆に当てました。
そうする中で、すべての固形がんは本物のがんとがんもどきに分かれると思い知りました。
本物は、発見されたときに既に他臓器への転移が潜んでいて、いずれ育ってくる。
もどきは、転移が潜んでいない。
本物は転移が潜んでいるので、治ることはなく治療は無意味。
もどきなら放置しても転移しないので、慌てて治療する必要はない。
発見されたがんがどちらであっても、早期に発見し、早期に治療することは無意味。
がん検診や人間ドックは百害あって一利なし、ということになります。
こういう考えを発表すると、専門家たちは猛反発。
前述のように「がん論争」が勃発しました。
僕の主張が認められれば、手術や抗がん剤治療の9割とがん検診がいらないことになり、がん治療ワールドが崩壊するので、反発はある意味当然でしょう。
問題は、どちらの言い分が正しいかです。