本当につらいね、悲しいね

ホスピスケアの現場から 柏木哲夫

彼女を傷つけた勝手な理由付けとは、彼女の1人息子が、万引きをしたり学校をさぼったりと、やや問題児だったのですが、父親が亡くなった後、急にしっかりとしてきたそうです。
そこである見舞客が、「きっと神さまは、息子さんを立ち直らせるために、ご主人の命を召し取られたのよ」と言ったのです。
これには、心底腹が立ったそうです。

そんな中、なじみの青果店のご主人は、籠いっぱいの野菜を持ってきて「奥さん、大変だったね。つらいね、悲しいね。買い物をする気もしないでしょう。野菜を持ってきたから使って。本当に悲しいね」と言って、きゅっと抱きしめてくれました。
これが彼女の心を一番癒してくれたそうです。
悲しんでいる人にとっては、本当に悲しみに寄り添うケアをしてあげることが一番大切なんですね。