末期がん患者さんの精神的苦痛に対応するチームをつくる

ホスピスケアの現場から 柏木哲夫

死んでいく患者さんは、体の問題と心の問題を抱えています。
だからこそ、それぞれの専門家が集まり、チームを組んでケアすることで、患者さんの多様なニーズにこたえられるという考え方だったんですね。
そんな体験を経て帰国した後、私は大阪の淀川キリスト教病院で精神科の医者として働きました。
するとそこでも、内科や外科の医者たちから末期がんの患者さんの精神的な問題について相談を受けたり、そういった患者さんにじかに接するようになりました。
そしてその体験からも、末期がんの患者さんが複雑な苦痛を持っているということが分かってきたのです。

そこで「我々もチームを組んでやろう」と呼びかけたところ、医者、ナース、牧師、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、そしてボランティアの方々が、集まってくれました。
結局、今までみんな困っていたんです。
それぞれの医療現場で、末期がん患者さんをどう支えればいいのかと思い悩んでいたんですね。
当初は専門的な施設は持たず、一般病棟でチームを組み、末期がんの患者さんのケアにあたりました。
しかし、それはなかなか難しいということが分かってきました。
一般病棟にはどうしても「治療優先」という考えがありますし、医者やナースの全員がホスピスケアに関心があるというわけではありません。