いのちを愛ずる 中村桂子
もう1つ「死」について、とても興味深いことが分かっています。
子どもが生まれる過程を生物学で調べていきますと、たとえば、お母さんのお腹の中で、赤ちゃんの手ができていきます。
お腹の中では、最初に拳のようなものができます。
そして、その拳の細胞が死んでいくと、そこが分かれて指ができていくのです。
つまり、おぎゃあと生まれる前、お母さんのお腹の中で、既に私たちの体をつくる細胞が死んでいく。
死があるから赤ちゃんが生まれる。
そういうことが起きているんですね。
やっぱり、生きているということには、死が組み合わさっているんだなと思わされます。
私たちは、死は避けたいものと思います。
でも、生き物の中には「ただ生きる」ことが、むしろマイナスになる場合もあるんです。