抗がん剤が命を縮める

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

PSA発見がんは普通、がんが見つかった時点で転移がなければ、その後も転移はありません。
僕がこれまでに診た前立腺がんで治療をせずに放置した患者さんの中で、最初に転移がなかったのに、あとになって出たという人はいません。

がんが見つかった時点で転移がなかったとすれば、渡辺淳一さんは9割の確率でがんもどきです。
放っておいても転移しないわけで、ムーンフェイスになるほどの抗がん剤治療は必要ありません。
というより、やってはいけないことでした。
強い抗がん剤が命を縮めてしまうからです。
また、渡辺さんに転移があったとしても、抗がん剤治療はするべきではありませんでした。
通常、前立腺がんで転移がある人の5年生存率は10%程度です。
9割の人は5年以内に死んでしまう。
ところが、僕の患者さんには、転移があっても5年以内に死んだ人はいません。
この差は、抗がん剤治療をするかしないかの違いでしょう。
抗がん剤を一切使わない僕の患者さんは、長生きできたのです。