私はガンで死にたい 小野寺時夫
食道がんで放射線治療を受けて2年半後に再発したHさん(68歳 男性)が中心静脈栄養を受けながらホスピスに転院してきました。
Hさんは大好きな清酒だけは飲めて、朝から飲んでいました。
Hさんが「大学病院で私のがんは進みすぎて手術できないと言われて放射線治療にまわされた。だが、手術を受けた同室の3人はみんな死んだのに、できなかった私がこうして3年近く生きている。人の運はわからないものだ」と、何度か話していました。
ホスピス入院後、がんが自然に崩れたのか、不思議なことに少しずつ食べられるようになり、1か月半後には中心静脈栄養を中止できるまでになったのです。
ところが、食道がんの状態を内視鏡で確かめようと予定した矢先、残念なことに酔ったHさんは、家族の差し入れた練り物を誤飲して急死しました。