愛別離苦を理解できない医師は・・・

心あたたかな医療を 遠藤順子

今は人工呼吸器の着脱は、家族の承諾を得なければならないそうですが、「当時はつけていいですか?」と聞く医療機関は5割くらいだったみたいです。
それに、よくインフォームド・コンセントと言いますが、人工呼吸器をつけますかと言うだけでなく「人工呼吸器をつけると最期の言葉は交わせないので、何か言いたいことがあれば今のうちに」と、そこまで言ってくださらないと、インフォームド・コンセントにはならないのではないでしょうか。

その夜、息子が仕事場から駆け付けてくれました。
すると、息子の声が聞こえたと同時に、脈もよくなり、血圧も上がってきたのです。
私は思わず「あなたの声が聞こえたから、パパが喜んでいるのよ!」と申しました。
そうしたら同席していた若い医師が「いえ、そういうことはありません。もう脳死状態ですから分かるはずはありません」とおっしゃったのです。
「悪いけどもう出ていってよ!」という気持ちでした。
こういう人に看てもらっても、心あたたかな医療はできないと思いました。

結局、主人が一番嫌がっていた人工呼吸器をつけられてしまったことが私は本当に申し訳ないと思うし、つらいことでした。