辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太
「不満だらけの満足」と私はよく言う。
仕事が面白くない、待遇が悪い、連れ合いの料理がまずい、亭主の足がくさい・・・不満を数えだしたらきりがないのだが、しかし大概の人たちは人生を放棄することなく、がんばっていく。
不満や愚痴をいいながらも、実のところは自分の人生が好きなのであり、生きがいもあるのだ。
不満や愚痴をいったりするのが、いい憂さ晴らしとなるなら、それはいいことだ。
しかしそこで、もうやめたと逃げ出してしまうのは、うまくない。
なぜ気持ちがつらくなるのかといえば、適応できないからなのではないか。
仕事がつらいのは、自分にはこの仕事には適性がないのではないかという思いがあるから。
職場に行くのがつらいのは、自分は職場の人たちから受け入れられていないという気持ちがあるから。
恋人と交際がつらくなるのは、あの人とうまくやっていくという自信がないからだろう。
気持ちがつらくなったときに、何もかも放棄してそこから逃げ出したくなるのは、心に「適応力」がなくなっている証拠でもある。
心が固くなっていて、柔軟性、しなやかさが欠けてきているのだ。
転職を繰り返す人、結婚離婚をくり返す人、友人をとっかえひっかえする人、夢中になりやく飽きやすい人。
今からでも遅くないから、心の柔軟性を高めるように努力すこと。
方法は簡単。
自分とは違った考え方をする人の意見も尊重すること。
視野を広げること。
心にゆとりを持つこと。
仕事以外に、趣味を楽しむ時間を作ること。
このような努力をしていくうちに、いつの間にか、心が柔らかくなっていく。