往きと還り

やはり死ぬのはがんでよかった 医師 中村仁一

人間には生来、穏やかに死ねる仕組みが備わっています。
生きるためには飲んだり、食べたりする必要がありますが、死に時がくればその必要はなくなります。
その結果、のどが乾かない、腹が減らない状態が訪れ、枯れるように亡くなるのです。
実際、同和園で経験したのは、1滴の水も入らなくても、すぐに息を引き取ることはなく、平均で7日~10日はスヤスヤ眠っていました。
そうやって最後は、体内の水分を使い果たして亡くなるのです。
これが、人間本来の自然死です。

人生は、往きと還りに分けて考えた方がいいと思っています。
なぜなら、歳をとったら生き方を変える必要があると感じているからです。
往きと還りの折り返し地点とは、繁殖を終えた時を言います。
往きは、明日のために頑張ろうという姿勢でいいのですが、還りになれば明日が来るかどうかも分かりません。
今日1日を一生懸命に生きようという生き方に変える必要があるのです。
つまり、今を感謝して生きようということです。