心あたたかな医療を 遠藤順子
苦しんでいる人、痛みを抱えている人をいたわることを、小さな時から教えていくべきだと思います。
花を育てたり、動物を飼ったり、とにかく自分よりも弱いものをいたわるということを、小さいときから家庭で刷り込んでほしい。
語学やピアノの練習と同じように、医療現場で暖かい言葉を1つ、すらりと言えるようになるまでには、長年の修業がいると私は思うのです。
たとえば、主人が亡くなる時にも、空の注射器を持った看護師さんが部屋に入ってきました。
家族は、こんなひどい状態になっているのに、まだ採血をするのかと思うわけです。
でも、看護師さんにとっても、お医者様にとってもそれは日常茶飯事で、数時間後に最愛の人と別れなくてはと苦しんでいる人のことは見えていないのでしょう。
「こういう時に採血するのはご家族にとってはお辛いことでしょうけれど、医療のために必要なことですから、どうぞお許しください」と、一言言ってくだされば、仕方がないと思えるはずです。