定年後の意識改革は前もって

「死に方」は「生き方」中村仁一

医者は職業柄どうしても、患者さんとは上下強弱の関係になり、また、そういう世界に住んでいますので、よほど自己陶冶ジコトウヤを心がけていないと、世間常識とずれて、子どもがそのまま大人になったような人間ができてしまいがちです。

ウサギは前足が短く、後ろ足が長いため、上り坂には大変適していますが、その分、下るときには非常な難儀をしなければなりません。
人生も同様です。
定年後は、前肢と後肢を付け替えるくらいの意識改革が必要なのです。
しかし、それは一朝にしてなるものではなく、前もって準備されていなくてはならないと思います。
つまり、生きてきたようにしか老いることができないということです。

長生きするということは、それだけ身体不自由になる機会が増えることを意味します。
リハビリの目標とするところは、必ずしもなくなった能力をもとの状態に戻すことではなく、残された能力を十二分に活用することにあります。
つまり、右手に障害があるなら、左手を活用することによって、障害者としての生活を再構築するのを手伝うことにあるのです。
諦める、断念するためには、これ以上はダメと明らめることから始まると思います。
明らかにできて初めて断念できると思うのです。