安易な励ましはマイナスに

ホスピスケアの現場から 柏木哲夫

ホスピスでは患者ばかりでなく、その家族のケアも重要視されます。
家族のケアというのは、つまりは悲嘆のケアになります。
悲嘆には2つの種類があります。
1つは「予期悲嘆」、もう1つは「死別後の悲嘆」です。
予期悲観というのは、患者さんの死を予期して悲しむことです。
そして、患者さんが亡くなると同時に死別後の悲嘆が始まるのです。
予期悲嘆の段階のケアは、悲しみを表現しておけがおくほど立ち直りが早いという研究結果があるので、少々変な表現ですが、ご家族にはできるだけ悲しんでいただく、悲しんでもいいんだということを伝えます。
そして、死別後のケアについては、ぜひ一般の方にもお伝えしたいことがあるのです。
それは、ご家族を亡くされて悲しんでいる方への安易な励ましや勇気づけは、マイナスになってしまうことが多いということです。

これはある死別カウンセラーの実話です。
その方は、牧師だったご主人を交通事故で亡くし、悲嘆にくれていました。
そのとき、教会から見舞いに来てくれた人の言動に余計に傷ついたそうです。
それは「いつまでもくよくよしないで、教会でみんなと一緒に歌いましょうよ」といった、安易な励ましでした。そしてもう1つ、彼女を傷つけたのは勝手な理由付けだったそうです。