子の独立

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

神経科を訪れる患者さんの症状の中には、核家族でなければこうした症状は起こらなかっただろうな、というケースをかなり見受ける。
とくに子供をめぐる様々な異常は、親子、とくに母子の異常接近が根っこにあることが多い。

ビジネスマンに多い心身の異常も、過干渉や過保護などが原因として横たわっていることが少なくない。

子は独立して自分の家族を持つ。
これが基本だ。
なのに、いい年をした子どもがいつまでも親と同居し、経済的な基盤から家事一切までを親に依存して、ヌクヌクと暮らしている例が増えている。
パラサイトシングルというやつだ。
まさに親に寄生している生活で、これではいつまでたっても、本当の自分の人生を始めたことにはならないのだと、声を大にして言いたい。

野生の猫は、子どもがあるところまで成長すると、さっさと姿を消す。
あまつさえ、必死に親を探した子どもが近寄ろうとすると、親は歯をむいて子を追い返す。
動物界の方がずっと賢明な子育てをしているわけだ。