四住期

日本人の生老病死 山折哲雄

人生の後半をどう生きるのかについては、1つのヒントがあります。
それは古代インドの人々が考えた、四住期という人生を4つに分ける人生観です。
その一番目は学生期です。
これは禁欲的な生活を送って、師匠について勉強する学生の時代。
2番目は、結婚して家庭をつくり、子どもをつくる。
家の職業に一生懸命に励む家住期です。
その家住期を経て安定した状況になったら、その家の主事人が家を離れて、それまでやれなかったこと、例えば宗教的な瞑想や音楽的な仕事、あるいは巡礼のような旅をする。
これを第3の林住期といっています。
そして林住期を終えたほとんどの人々は、やがてまた、家族のもとに帰ってくる。
しかし、林住期の旅の生活を送っているうちに、何百人かに1人は第4の遊行期という人生段階に入っていく。
遊行とは自分の家に帰らずに、永久に旅を続けて、悩める人々の魂を救って歩く、いわば宗教者の道です。
たとえばお釈迦様のような人、あるいは現代のマハトマ・ガンジーのような人は、遊行期という世界に入って、人類の魂の看取りの仕事をしているわけですね。

私が一番好きなのは、林住期なんです。
世俗の世界から、一時的に離れてみる。
しかし、そのまま聖者の世界に行ったり来たりしながら、やりたいことを自由にやる人生段階を考えたというのは非常に面白いですね。

こういう生き方をしなければ、老病死がゆっくりやってくる時代を、幸福に、積極的に生きていくことはできないかもしれません。