名詞に形容詞をつける

明日この世を去るとしても今日の花に水をあげなさい 樋野興夫

「ユーモアとは、YOU・MOREなり」、つまり「あなたをもっと大切に」という意味です。
患者さんにそのことをお話しすると、「先生、それっ、駄洒落ですか?」と、これまで暗かった表情が一瞬ほころびます。
ユーモアの力です。

名詞の世界は断定的で、名詞だけだと人を傷つけてしまうことがあります。
そこで名詞に形容詞をくっつけてみます。
すると、どうでしょう。
ぐんと意味合いが広がります。
たとえば、こんな具合です。
よい茶髪と悪い茶髪。
「茶髪」のままだと人によっては悪いイメージが先行することがありますが、「よい」とつけることでプラスに転じ、言われた方もうれしくなります。

よい不良息子と悪い不良息子。
よい不良息子は、いざというときに他人のために自分を犠牲にできる。
悪い不良息子は、どんなときも自分のためにしか動こうとしない。

いい目立ちたがり屋と悪い目立ちたがり屋。
「いい目立ちたがり屋になれ、自分のためではなく人のために」と演説したのはキング牧師です。

ユーモアで思い出すのが、すい臓がんを患っていたある男性の言葉です。
自分の病気をユーモラスに語ってくれました。
「どこで噂を聞きつけたのか、気の早い人が香典を送ってくるんですよ。先生、どんなお返しをしたらいいですか? 困っているんですよ」