危機に襲われないと・・

いのちの言葉 作家 高史明

人間は「生きること」と「いのち」という言葉を一緒に考えている唯一の存在だと言っていいと思います。
にもかかわらず、私たちは日常生活の中で、そのことをあまり深く考えないのではないでしょうか。
そして、いのちが危機に襲われたとき、はじめて生きること、いのちということを真剣に考えるのではないかと思います。

正岡子規は、病気の苦しみのどん底で、いのちについて、どのように考えたのかを書いています。
「死ぬることもできねば、殺してくれるものもない」と言います。
次に叫びを上げていました。
「1日の苦しみは夜に入ってやうやう減じ、わずかに眠気さした時には、その日の苦痛が終わると共に、はや翌朝、寝起きの苦痛が思ひやられる。寝起きほど苦しいときはないのである。誰かこの苦痛を助けてくれるものはあるまいか」