医者ががんにかかったとき 竹中文良
自分のがんに自分で気づいたわけですが、それ以前に何もサインがなかったかというと、そうではありません。
正直に言えば、2年ほど前から時々便に血がつくことに気がついていたのです。
自分の場合はおそらく痔であろうと勝手に判断し、見送っていました。
医者の不養生の典型です。
それで結局3センチくらいまでに育ってしまい、手術も遅れたわけです。
手術を待っているときの不安というのは、非常にデリケートなものですね。
それまで腫瘍があることに気づいてもいなかったのに、あると分かってからは、手術までの3週間、毎晩それがきちんと触れるんです。
しかも、夜中に目覚めて触れたりすると、前の晩より大きくなっているような妄想にとらわれる。
ですから仕方なく、毎晩睡眠薬を飲んでいました。