近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
東日本大震災の原発事故で、国が避難の目安にした被ばく線量は年間20ミリシーベルトでした。
ところが、胸部CT検査で受ける線量は、1回で約10ミリシーベルト。
腹部・骨盤CT検査となると、約20ミリシーベルトにも達するのです。
つまり、腹部のCT検査を1回受けると、それだけで年間の線量を超えてしまうのです。
自覚症状があって、その原因を突き止めるために検査を受けるなら、被ばくも仕方がないかもしれません。
しかし、何の自覚症状のない健康な人が、わざわざ被爆しに行くのはおかしいでしょう。
原発事故の放射線量には敏感に反応するのに、医療被曝に無頓着なのはどうしてでしょうか?
日本人の検査好きは世界でも群を抜いていて、CT装置の設置台数は日本が世界一。
なんと、全世界のCTの3分の1以上が日本にあるそうです。
また、がんの早期発見の切り札と言われるPET検査も、放射線の薬剤を体内に入れるため、やはり被爆します。
PETだけなら被ばく線量はCTよりも少ないのですが、近ごろはPETとCTを組み合わせた検査もありますし、PETで異常が見つかれば、結局はCT検査も受けることになります。
しかもPETは、健康な人が受けると小さな炎症にまで反応してしまうため、CTを受けざるを得なくなります。
その結果、大量の放射線を浴びて、発がんの危険性が高まってしまうのです。