医療を見る目・・

寿命が尽きる2年前 日下部羊

パプアニューギニアの奥地では、呪術医が活躍していて、現地の人の治療にあたっていました。
村人が集まっている中で、呪術医は先祖伝来のひもを巻いた木片を取り出し、コップの水と対話するという方法で、患者を診察していました。
村人たちはその奇妙な診察を真剣に見守り、呪術医の診断に大きく頷いていました。

一見、非科学的に見えますが、医者を信用しているという点では、日本の患者さんも大差ないように思えます。
CTスキャンの画像を見せられたり、血液検査の詳しい説明を聞かされたりして、意味も分からず信用しているのなら、パプアニューギニアの村人と心理的には変わりないでしょう。

モーツアルトは高熱で苦しんでいるとき、血液を300~500ミリリットル抜く治療をくり返し受けて亡くなりました。
弱っている患者から血を抜くなんて、何と野蛮なと思うかもしれませんが、当時は、人間の基本体液を、血液、粘液、黄疸汁、黒胆汁という、れっきとした医学知識に基づいて行われていたのです。
現代の人はそれを笑いますが、25世紀くらいから見れば、21世紀の医療もとんでもないまやかしだったり、勘違いだったりする可能性は十分あります。