大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一
「自分の死を考える集い」の参加者の森野さん84歳男性は、京都府外にお住いの方です。
5年前にガン拠点病院で検査の結果、肺がんが見つかりました。
その時担当医が、「80歳なら手術はやらないんだが、あなたは79歳だからしよう」といったらしいんですね。
その一言に疑問を感じた森野さんは、人づてに聞いて「集い」にやってきたんです。
そして、2,3回参加され、私の考え方に共鳴され、その後、いっさいの医療との関係を絶つんです。
そして、痛みも出ず、呼吸困難もなかったのですが、満5年目の1か月前にへたり込むんです。
ただ、それまでの4年3か月は好きな卓球をして過ごしたそうですから、すごいですよ。
いわゆるQOL(生活の中身)は、全く落ちていませんからね。
しかし、医療と縁を断っていますので、どこの医者にもかかっていないわけです。
私が相談を受けて、そのまま自宅で亡くなると「不審死」ということで警察が入って厄介なことになるので、至急、往診医を探すように助言しました。
地元の医師会に相談に行ってもらいました。
ところが、ガンの自然死など見たことも聞いたこともなく、医者の常識外ということで、全く取り合ってもらえませんでした。
しかし、そのままというわけにもいかず、八方手を尽くした結果、何とか医者が見つかりました。
ただ、ガンは闘病するのが当たり前、初めから何もしないなどというのは、医者の常識にはありません。
やはり、開口一番、「入院しろの、検査しろの、点滴をしろ」のと、喚かれたそうです。
そこで、仕方なく1回だけ点滴を受け、血液検査も許したそうですが、以後は、死亡確認をして、死亡診断書を発行してもらえればそれでいいと、すべてはねつけたんです。
最期は奥さん1人で看取りました。
奥さんは、自分の時の参考にしなくてはと、しっかりと一部始終を見届けたといいますから気丈な方です。
最初は、何も治療をしないことに猛反対していたご子息たちも、最後は「よくぞ、こんな穏やかな死を見せてくれた」と感謝されていたとのことです。