近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
人の体内では、毎日何千個ものがん細胞が生まれているとよく言われます。
人の体には約60兆個の細胞があって、それらが常に酸素や放射線や農薬といった、遺伝子を傷つける物質にさらされているのですから、確かにそうかもしれません。
が、それは証明されていません。
たとえ毎日何千個ものがん細胞が生まれているとしても、今の技術ではその様子を見ることができないため、証明できないのです。
風邪などは、免疫の働きによって治ります。
しかし、ウイルスに感染してかかる風邪と、遺伝子が傷ついてできるがんは、成り立ちが根本的に違います。
免疫力で風邪が治るからといって、がんが治るわけではありません。
免疫細胞(白血球)が、風邪のウイルスを攻撃するのと同じように、がん細胞を攻撃してくれるなら人はがんにならないはずです。
ところが、人はがんになります。
免疫細胞は、基本的にがん細胞を攻撃しないのです。
がん細胞は、正常細胞が少し変化しただけの自分自身であり、免疫は自分を攻撃しないようにできているからです。
さらに、間違って自分自身を攻撃する場合には、攻撃をストップさせる仕組みが免疫には備わっています。
したがって、たとえ免疫力を高めることができたとしても、免疫によってがんを予防したり、治したりすることはできないのです。