心あたたかな医療を 遠藤順子
遠藤周作の女房の遠藤順子です。
主人の最期の闘病生活となった3年半は、私も毎晩病院で暮らしました。
腎臓の病気だったので、そのころは、よく夜間に腹膜還流透析という治療をしていました。
腹膜還流透析というのは、お腹に穴をあけて腹膜まで管を入れ、その管から1回2000CCの薬液を入れます。
そして2時間、腹膜の中にその液を入れたままにしておくのです。
2時間たって、たとえば2300CCの廃液があれば、本来ならおしっこで出る300CCが一緒に出てきたという仕組みです。
これを1晩に5回繰り返すのです。
そうした透析も初めの1年くらいは順調でしたが、だんだん、本来は尿で出てくるものが出てくれなくなってきて、苦しむようになりました。
それを見かねた方が、移植の先生を紹介するから会いなさいと言ってくださったこともありました。
そのとき息子は「ぼくの腎臓を片方あげるよ」と言ってくれました。
それは私にとって嬉しいような、ショックのような複雑な気持ちでした。
これから世の中に出る人間が1つの腎臓だけで生きていけるものなのかしら、それが悪くなれば、息子は死んでしまうのだと考えだすと、もうどうしようかと思いました。