近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠
「あなたは、がんです」と言われたり、家族ががんと言われたりすると、まずショックを受け、それから「あとどれくらい生きられるのだろうか?」と思うのが普通ではないでしょうか。
「がん=死」というイメージがあるからですが、そんな患者さんの不安に乗じて「放っておけばあと3か月です」などと言う医者がいます。
でも、僕の経験からすると、余命を数か月の幅で判断できるのは、ぎりぎりの状態、あと1か月くらいになったときだけです。
この頃になると、がんがあちこちにできて大きくなり、重要な臓器の機能が落ちて様々な症状が出るために、「あと1か月くらいだな」と分かるのです。
ところが、それでも1か月どころか2か月、3か月と生きる患者さんが全体の半分ほどいます。
がんの進行度合いが同じでも、寿命は人によって違うのです。
まして、自分の足で歩いて病院に来た人の余命なんて、分かるはずがありません。
第一、余命は平均値ではありません。
このがんの、この進行度の人は平均してこれくらい生きる、という数字ではないのです。
では何かと言いますと、半数生存期間です。
例えば胃がん末期の場合、半数生存期間は1年前後ですが、人によっては亡くなる時期は、診断直後から5年以上先までバラバラなのです。