仕事はときめきを感じるかけがいのないもの

いつでも死ねる 帯津良一

仕事は私にとって、ときめきを感じるかけがいのないものです。
自分の半分以上の時間を仕事に充てているのに、ときめきがないというなら、人生の大半を無駄にしているようなものです。
どんな仕事であっても、やるからには、今やるべきことに集中して、全体力、全気力を使い切るくらいの気持ちでやると、そこにときめきが生まれてきます。

私は土日は講演で全国各地を回っています。
以前は、講演のために事前準備はほとんどせず、舞台に上がって、会場に来られている方々の様子を見て、その場の雰囲気に合った話をしてきました。
しかしこの頃は、それではいけないと思うようになりました。
準備をするといっても、話す内容をメモしておくくらいですが、メモをするだけでも「やるぞ!」という気持ちが高まってきます。
前もって準備をし、それを舞台に上がってお話しして、聴衆の皆さんが熱心に聞いてくださっているのを見ると、心がときめいてきます。

90歳を越えた著名な女性が講演のために川越にお越しになっていて、街を散策しているときに急にめまいがしたとかで、私の病院に来られました。
検査をしましたが、特に緊急を要するような問題は見当たりませんでした。
翌日の講演はやめた方がいいとアドバイスするのが医者としての常識でしょう。
90歳を過ぎて、日本中を講演して回っているのは、お金や名誉のためではありません。
彼女の話を聞いて元気になった方がたくさんいます。
講演を通して、喜びの笑顔を増やしていくのが彼女の志でありときめきなのです。
彼女の目には強い意志が宿っていました。
私は診察後、彼女にこんな言葉を掛けました。
「明日の講演が終わったら、一緒においしいお酒を飲みましょう!」
彼女はにこっと笑いました。
たとえ、講演中に倒れても、彼女は決して後悔しないでしょう。