医者ががんにかかったとき 竹中文良
この頃、晩年の生き方というものを考えるようになりました。
それは、できるだけ先のことを考えず、今できることを精一杯やろうということです。
人間が年を取るということは、一言でいえば、乾燥と硬化です。
皮膚も乾いてくるし、もちろん細胞も乾いてきます。
そして硬くなる。
これに関しては鍛えるのは無理ですから、常に体を活発に動かしていくということが大事なんですね。
それから、ある程度年を取ると、感覚も鈍くなってきます。
私たち医者が4時間、5時間という長い手術をした後、一番先に疲れるのは、20代、30代の若い人です。
そして後になって「今日は疲れましたね」というのが40代くらい。
私たちの年代に至っては、疲れが2日も出ないのです。
これは何も、我々が強くなっているのではなく、鈍くなっているのです。
私はがんと闘ってきた医者たちを大勢看取ってきました。
その方たちに共通していたのは、人間の寿命には限界があるのだということを、60歳くらい、あるいは70歳、80歳など、それぞれのポイントで感じ取って、自然にまかせ、眠るように逝ったことです。
ジャパンウエルネスに来ている人たちには、緩和ケア病棟を紹介することがしばしばあります。
すると、あちこちの緩和ケアの先生から、ウエルネスからきた患者さんは、腹が据わっていると言われます。
それは患者さん同士が話会うことによって、死への対応の仕方を、自然に身につけているのではないかと思います。