人間は死亡率100%

「死に方」は「生き方」 中村仁一

人間生まれて成長して、老いて死んでいくのは自然のはずですが、今や老いや死を何か不自然なものとみなすようになってしまっています。
いつの頃からか、私たちは自然なはずの老いや死を嫌い、忌避し、顔をそむけるようになってしまったのです。
そして、死を病院という場所に追いやり、普段、身の回りには死というものが存在しないような顔で生活しています。

確かにこれまで医学は死に挑戦し、数々の戦果を華々しくあげてきました。
そのせいでしょうか、死は医学の敗北であると言われています。

しかし、人間はそもそも死亡率100%の存在なのです。
これは今後、どんなに医学が発達しても永劫に変わらない事実だと思います。
であるならば、「医学の敗北」などと言うのは、はなはだ厚顔というものでしょう。

私たちは、他の命をの犠牲の上に生かされている、かけがえのない尊い存在です。
ですから、精一杯生きる義務を負っていると思うのです。
この世に存在するのは、まだ使命が残されている証拠なのです。
役目が終われば、ちゃんとあの世に召喚される手はずになっていると思いますから、それまでは、生かされているという自覚の下で、あるがまま一所懸命生きなければならないのです。

私たちは、他の命の死がなければ、1日たりとも生きることのできない存在です。
だとすれば、食べ残すのはもったいないことであり、余分に食べるのはけしからんことなのです。