人間の本質は「かなしみ」

いつでも死ねる 帯津良一

人間の本質は「かなしみ」だと、ひらめきました。
巷では、明るく前向きに生きれば免疫力が高まると言われていた頃です。
私も最初は、そう思っていたのですが、たくさんの患者さんと接しているうち、本当にそうなのだろうかと疑問がわいてきました。
人間というのは、明るく前向きにできているのだろうか。
私の頭の中では「そうじゃない」という言葉がこだましていました。
だったら、人間の本質とは何なのか?

人間は、誰しもが心の奥の方に悲しみと寂しさをもって生きています。
それが活きる土台です。
悲しみや寂しさの上に、私たちは喜びや明るさといった家を建てます。
だから表面上は喜びに満ちあふれ、明るく生きていても、少し掘り下げていくと、そこには悲しみが顔を出してくるのです。
これは私にとって大発見でした。
悲しみが人間の本質だと分かれば、とても「生きるのが楽」になります。
誰しもつらいこと、苦しいことに直面して、落ち込んだり悩んだりします。
しかし、悲しみが人間の本質だと知っていれば、多少は落ち込んでも、あるところで歯止めが効くのです。