やはり死ぬのはがんでよかった 医師 中村仁一
死が近くなって何も食べなくなっても、体内の臓器は動いています。
その場合、脂肪がエネルギー源になります。
脂肪は分解されると、水と炭酸ガスとケトン体になるのですが、このケトン体と言う物質には鎮静作用があります。
つまり、飢餓状態になるとβエンドルフィンとケトン体によって、苦しみどころかすやすやと眠るようになるのです。
また最期のときが近づくと、呼吸状態が悪くなります。
息が何十秒も止まったり、肩で息をしたりします。
初めて見ると、いかにも苦しそうに思うのですが、顔をよく見ると穏やかなのです。
苦しそうに見えても、本人は苦しくないのです。
呼吸がうまくできなくなると、炭酸ガスが排出されずに体内に溜まります。
酸欠状態のときも、βエンドルフィンが出ます。
そして、炭酸ガスにも麻酔作用があるのです。
このように、死に際の飢餓状態には、二重三重もの「楽に死ねる」仕組みが備わっているのです。