人間としての成長を

いつでも死ねる 帯津良一

ある年齢になれば、健康診断ですべてが正常値などということは望まない方がいいでしょう。
そんなのは無理な話ですから、血圧が高ければそれなりの年の取り方をしていると思っていればいいのです。
膝が痛くなれば、長年がんばってくれたからなあと、いたわってあげればいいし、ガンになったら「人生に締め切りが設けられた。総仕上げだ!」と悔いのない人生に向けてアクセルをふかせばいいのです。

若く見られることに執念を燃やしたり、健康診断の数値によって一喜一憂したりするよりも、私たちにはもっとやるべきことがあるはずです。
体力には限界がありますが、人間としての成長には終わりはありません。
哲学者の池田晶子さんは、「池田は死ぬが私は死なない」という名言を残して旅立っていきました。
46歳という若さでした。
若くして旅立つことを嘆くこともなく、死んでも自分を高めるぞという強い意思を、私はこの言葉から感じます。

老化や病気や死を怖れ、おどおどしながら10年長生きするよりも、老化も病気も丸ごと飲み込んで勢いよくあの世に飛び込んでいく、そんな覚悟を持って生きたほうが、充実した人生を送れるのではないでしょうか。