人生を楽しむ 小林正観
ある会社の社長が亡くなりました。
心臓マヒ、いきなりの死亡でした。
社長は林の中を歩いていましたが、突然きれいなお花畑に出ました。
お花畑に出たとたん、どこからか声が聞こえてきました。
男の声、女の声、どちらともいえず、荘厳とかおごそかとか、そういう感じもない。
といって、冷たい事務的な声というのでもない。
その声は、こう言ったそうです。
「川のほとりまで行ったら、そこであなたの人生について尋ねる。
川のほとりまでに、どんな人生だったかをまとめておきなさい。
この社長は、他人の10倍も20倍も働き、努力して、頑張ってきた人でした。
会社も大きくし、従業員も増やしました。
商工会の役員をやり、名誉や地位も充分に手に入れていました。
「胸を張って、人よりもたくさん努力し、頑張ってきたと言える。それなりの成果、実績、数字も達成してきた」と思ったそうです。
川のほとりに来ました。
いわゆる「三途の川」でしょうか。
再びあの声が聞こえてきました。
「それでは、あなたの人生について聞く。答えの用意はできたか」
胸を張って社長は「はい」と答えました。
「それでは聞く。人生をどれほど楽しんできたか?」
社長は絶句しました。
人生を楽しもうと思ったことはなかったし、楽しんだこともなかったからです。
従業員を怒鳴りつけ、家族に対しても厳しかった。
自分に厳しく生きてきた分、社長は周りの人にも常に、厳しく当たってきました。