人生を医師に支配され

「死に方」は「生き方」 中村仁一

自分たち夫婦が作った財産なら、下手に子どもに残そうなどと考えずに、使い果たして逝くのも一法です。
なまじ、わずかばかりを残して、相続争いで世間の耳目を集めるより、「子孫に美田を残さず」でいきたいものです。
子どもの方でも、親が死んで遺産があれば悲しみが半減してしまいますから、遺産のないほうが悲しみに浸れていいのではないでしょうか。

今のお年寄りは、少しでも体調が思わしくなかったり、何かちょっと違和感があれば、すぐ病院に行くという医療依存が強いように思います。
病気のことは、すべて専門家に任せれば安心とばかりに、自らの主体性を放棄してしまったようです。
「ああしなさい、こうしなさい、それはしてはいけません」と、医師に人生を支配され、自らの人生の主人公たることを止めてしまったかのごとくです。
その結果、常識と思えるようなことでも、逐一専門家に尋ねなくては自信が持てず、自主的判断能力を失ってしまったようです。