下座に生きる 神渡良平
娘さんの死が野口雨情の転機となりました。
「七つの子」「青い眼の人形」「十五夜お月さん」など、後世まで残る童謡を書き残しました。
「シャボン玉」は、雨情がお嬢さんへの思い出を託した歌でした。
シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
生まれてすぐに
こわれて消えた
風、風、吹くな
シャボン玉飛ばそ
この歌はごく平凡なシャボン玉を飛ばしている情景だと思っていましたが、そうではなかったのです。
子どもに対する父の思いを表現した歌だったのです。
私たちに注がれる父や母の愛はこういうものです。
私たちの背後には、父母のそういう祈りや涙があります。
そういう愛に育まれて大きくなってきたのに、それを忘れてしまい、さも自分一人で大きくなったかのように錯覚しています。
私たちの父母も決して理想的な人たちではないかもしれません。
やっぱり普通の人間で、時には酒に酔い、時にはかんしゃく球を破裂させてしまう。
ときには親としての責務を放棄して、逐電したりもします。
でも世の荒波に勝てず、そうなってしまったと思えば赦す気持ちにもなれます。
自分だってそんなに強くないと思えば、責めることはできません。
どんな父母でも若いころは子どもの幸せを願って、一途に尽くしてくれたことがあったことを想えば、感謝しか湧いてきません。
人生はまさしくご恩返しです。
お世話になった方々にご恩返しせずに死ぬことはできないと思うようになりました。
人さまへのご恩返しとして事業が行えるようになった時、仕事は自分とお客さまをつないでくれる懸け橋になってくれるのです。
「ありがとう、助かったよ」と言っていただけることが、うれしくてたまらないのです。
その時、限りなく生きがいを感じ、いい仕事ができたと満足できるのです。