ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛
私が好きな映画のひとつに「最高の人生の見つけ方」がある。
生まれも育ちも違う、自動車工と大富豪の2人が、同じ病院の1室に入院する。
2人は共に余命6カ月と診断され、自動車工は残された人生でやりたいことを書いた「棺桶リスト」を作成する。
それを見た富豪は、そのリストの実行を提案し、2人はスカイダイビングやライオン狩りの旅に出る。
友情を深めてきた2人は、その途中で些細な理由でケンカ別れをしてしまうが、それでも最後には感動的な結末が待っているーこんな映画である。
私は病気になる前から、漠然と「死ぬ前にはやりたいことのリストをつくり、それを楽しむのも有りかな」と考えていた。」
現実には、好きなことだけし続けて死ぬことができる人はめったにいない。
人生の最期に何をしたいのかー改めて問われると、これを具体的に答えることはなかなか難しい。
家族との旅行、友人との会食、そして患者さんとの対話ーそれはいずれもそうなのだが、本当にそれが最期の1つなのかと問われると、今の自分には正解が分からない。
最高の人生が何であるかは、人それぞれ違う。
私が最後にやりたいこととは、自分にとって、かなりしんどい仕事になるかもしれない。
これまで、無理して引き受けた仕事や、迷った末にやると決めた仕事は、不思議と私に何かしらの財産を残してくれた。