不労所得?

お金の賢い減らし方 大江英樹

日本では多くの人が、「投資のもうけは不労所得」だと思っています。
では、そもそも働くというのはどういうことを言うのでしょうか。
モノをつくる、販売する、営業に行く、事務処理をする、研究開発に従事すると、ざっと考えればこんなところでしょう。
では社長は一体どんな仕事をしているのでしょうか。
普通は、ここに挙げたような仕事はやっていません。
すなわち経営者の仕事は「判断すること」そして「判断したことに対して責任をとること」です。

会社が持っている経営資源、俗に「人、モノ、金」と言われますが、人員をどの分野に投入するか、設備やインフラをどう活用するか、そして何にお金を投資するかを必死で考えて決断します。
うまくいかなくて会社に大きな損失が生じると、責任を取って辞めざるを得ないということもあります。
さらに辞めるだけであればまだしも、株主から訴訟を起こされ、損害賠償を請求されることだってあります。
つまり、経営者はリスクを取って事業をしているのです。

でもこれは、よく考えてみると投資家がやっていることと同じです。
投資家は、自分の持っているお金を何に投資するのが一番収益が上がるかを考え抜いて、投資を決断します。
その結果がよいか悪いかは分かりませんが、どちらになったとしても、責任はすべて自分が負うことになります。

会社や商売をしたことがある人なら、資金繰りが行き詰まったりするときの恐怖感は分かると思いますが、会社員にそれを理解しろといっても難しいでしょう。
反対に、自分がリスクを取って判断し、それが成功した時の高揚感を味わうこともできません。
従って、経営者の視点で判断することのない会社員にとっては、投資家の視点も理解できないかもしれません。
このように考えていくと、投資のもうけが不労所得と考えてしまう人が多いのもうなずけます。