マニュアル

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

最近の企業では、何でもマニュアルを作って進める。
社員教育でさえマニュアル通りに行うと聞く。
確かにマニュアルは誰でも失敗しないような手順が書いてあり、初心者でもそこそこ問題なく遂行できる。
だが、マニュアルが人の心に届くものではないことは、ファーストフードのサービスを見ればよく分かる。
「他に何かご入用のものはありませんか?」と、まるでテープレコーダーが回っているような紋切り型のサービスだ。
ただ、黙ってニッコリしてくれるだけの方がましだと思えてくる。

大手クリーニング業のクレーム係の人に聞いた話だが、洋服のクリーニングに失敗してしまった場合、間違っても、同じようなものを買ってお届けしますといってはならないそうだ。
同じものが新品で手に入れば文句はないではないかと考えがちだが、お客は何となく釈然としない。
それよりも、何度となくクリーニングし直し、できるだけ元の状態に近づけた方がお客は満足するのだそうだ。
この気持ち、何となく分かるような気がする。
何度となくクリーニングし直すことで、一生懸命さと誠意が伝わるのだ。