ホスピスで癒される

ホスピスケアの現場から 柏木哲夫

イギリスの研修から帰ると、私はすぐに内科の研修を3年間受けました。
そして、1984年にホスピスを設立し、それ以降これまでに約2,500名の方々を看取ってきました。
そうする中で、患者さんから教わってきたことは私の一番の宝となっています。

例えば、患者さんが入院してこられて、しばらくすると「ここへきて癒されました」とよく言われます。
癒すという言葉には2つの意味がありました。
1つはケガや病気を治すという意味ですが、もう1つ、長い間手に入らなかったものを手に入れるという定義があることを知ったのです。
患者さんがここにきて「癒されました」というのは、2番目の意味だったのです。
今までいろいろな病院で診断を受け、治療を受けたものの、つらさ、さみしさ、やるせなさといった気持ちを理解してもらえなかった。
その患者さんがホスピスに来て初めて、じっくりと話を聞いてもらい、自分のつらい気持ちが分かってもらえて「癒されました」と言っていたのです。