ピンピンコロリは幸せ?

70歳からの選択 和田秀樹

一人暮らしを楽しめるのは、男性よりも女性なのです。
独居高齢者の幸福度に関する研究では、独居高齢男性の幸福度は家族と暮らす高齢男性と比べて低くなり、独居高齢女性は幸福度が高くなる傾向があるという分析がなされています。
その原因として、高齢男性は人との交流が少なく、一人暮らしになることによって孤立化しやすいこと、家事負担が重くなっているのに対して、独居高齢女性はほかの家族の家事負担から解放されるとともに、男性よりも交友関係が広いことが挙げられています。

病気に苦しむことなく、健康に長きをして、ある日突然、ころりと逝くことを「ピンピンコロリ」といい、理想的な死に方だとされています。
ここには、「長く苦しみたくない」「家族に迷惑をかけたくない」という意識が働いているのだと思いますが、現実には「ピンピンコロリ」で逝くことができるケースは少なく、むしろ寝たきりの末に亡くなる「ネンネンコロリ」の方が多いとされています。

ただ、本当に「ピンピンコロリ」の方が幸せかといえば、必ずしもそうとはいえないでしょう。
まず、本人に目標ややりたいことがあるにもかかわらず、心筋梗塞や大動脈瘤解離などで突然死んでしまった場合、いくら高齢でも「ピンピンコロリ」でよかったとはならないのでしょうか。
いくつになってもやりたいことがあり、その意欲も枯れていない状態は、それこそ幸せな人生だと思います。
そのような人にとって、「ピンピンコロリ」はあまりにも唐突過ぎるのではないかと思います。
また、いきなりこの世を去るわけですから、人に見られたくないものを処分したり、自分が死んだ後のことを考えて準備したりすることもできないわけです。