ピロリ菌

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

ピロリ菌は、胃がんの原因とされています。
そのため、胃がピロリ菌に感染していると分かると、除菌を勧められます。
ピロリ菌を除去すれば、胃がんを予防できるのでしょうか?

その効果を確かめるために、以前、臨床試験が行われました。
くじ引きでピロリ菌を除去するグループと、除去しないグループに分けて、がんができるかどうかを見たのです。
その結果、ピロリ菌を除去したグループではゼロにならなかったものの、がんの発生は減りました。
一見、ピロリ菌の除去は胃がん予防に効果があったという結果です。
しかし、除菌したグループでも、除菌しないグループでも、出たのはほとんどすべて粘膜内がんなのです。
粘膜内がんとは、粘膜の中だけにとどまっているがんで、日本ではがんと診断されますが、欧米ではがんと診断されません。
要するに、胃の粘膜の慢性変化であり、がんもどきです。

ピロリ菌があっても、出てくるのはほとんどが、がんもどき。
ということは、ピロリ菌の除去は、がんもどきの予防にはなっても、本物のがんの予防にはなっていないわけです。