ココロの架け橋 中野敏治
放課後、地域の方から学校に電話が入りました。
「おたくの生徒らしい子が、タバコを吸っています」
何人かの教職員でその場に駆けつけると、私のクラスの男子生徒が2人いました。
タバコは吸っていませんでしたが、1人は以前、喫煙で指導した生徒でした。
彼らの慌てぶりから「もしかして・・・」と思いました。
「何をしていた?」と訊ねても何も答えません。
「タバコを吸っていたのか?」と問いかけると、「どこに証拠があるんだ!」と、吐き捨てるように言うのです。
何人もの教師がいるから興奮しているのだろうと思い、その場から2人を連れて学校へ戻り、広い会議室で話しを聞きました。
「本当のことを言っていいんだ、本当のことを言わないままでいると、いつまでも心がすっきりしないぞ」と静かな口調で彼らに語りかけました。
2人は少し落ち着き、ぽつりぽつりと話し始めました。
1人の生徒が小さな声で「俺、タバコを少し吸った」と呟くように話しました。
タバコを吸った理由など聞きませんでした。
これからどうするかを、彼らと話しをしました。
悪いことをしたが、そのことを自分から素直に話してくれたことはうれしかったのですが、保護者にも伝えておかなければと思い、「今夜、家庭訪問をするから、先生がいく前に自分から親に話しをしておくんだぞ」と伝えました。