ジョブズさんの場合

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

アップル社の創始者、スティーブ・ジョブズさんは、2011年10月にすい臓がんで亡くなりました。
まだ56歳でした。
08年の新製品発表会では、製品ではなく、ジョブズさんのやせ衰えた姿に注目が集まってしまいました。
ジョブズさん側からは、体重が減ったのはホルモン異常のせいだと発表されましたが、実際にはがんが肝臓に転移して広がり、深刻な状態だったようです。

ジョブズさんにすい臓がんが見つかったのは、2003年でした。
当然医者は手術を勧めましたが、ジョブズさんはこれを拒否。
新鮮な人参とフルーツジュースを大量にとる「絶対菜食主義」や、鍼、ハーブ、腸の浄化など、さまざまな民間療法を行い、それでがんを克服しようとしたのです。

ところが、がんは克服できるどころか、大きくなってしまいます。
その事実にショックを受けたジョブズさんは、ようやく周囲の勧めを受け入れて、2004年7月にすい臓がんの手術を受けました。
しかしこのとき、すでに肝臓に転移のあることが分かりました。
そのため、ジョブズさんは抗がん剤治療も受けたようですが、菜食主義は貫き通しました。
この菜食主義が、ジョブズさんを激やせさせ、がんを急激に大きくしたのです。
がんになるとやせるとか、がんを放置するとやせると思っている人がいますが、そんなことはありません。
ちゃんと栄養のあるものを食べていれば、がんを放置しても激やせすることはないのです。