お金の賢い減らし方 大江英樹
50代社員向けセミナーをすると、必ず出てくるのが「好きなことをやれ」と言われても、何をやっていいのかわからないと言う人です。
これは典型的なサラリーマン脳の発想です。
サラリーマン脳とは、一言で表すと「すべての活動が受動的である」ということです。
上からの指示がないと、自分から能動的には行動できなくなってしまっているのです。
何かをすることによるリスクを過剰に恐れ、ひたすら責任を逃れることばかりを考えるようになるという感覚です。
学校を出て社会人になるときは不安がある一方で、自分はこんな仕事がしたいとか、将来こうなりたいという目標があったはずです。
ところが、いったん組織の中に入ってしまうと、すべてにおいて自分の意志だけで物事を決めることはできなくなってしまいます。
結局、組織の中で物事を進めようとすると、根回しとか、社内力学とか、バランス感覚を重視せざるを得なくなります。
組織の中で、自分が関わる案件を通すためには、気の遠くなるようなパワーが必要になります。
必然的に「自分のやりたいこと」を考えるということは次第に遠ざかっていきますし、仕事以外のことでも「自分のやりたいこと」を明確に意識するという習慣はだんだんなくなっていきます。
かくしてサラリーマン脳に侵された結果、「やりたいことをやれ」と言われても、何をやっていいかわからないということになるのです。