ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛
ガン患者になると、周囲が優しくなるというのは本当だ。
闘病しながら仕事をしている私に対しては、いろいろ言いたいことがあったとしても、なるべくきついことを言わないように配慮してくれている。
私はそれを素直に受け止め、上手に甘えさせてもらっている。
なまじ「気を使わないでくれ」「以前と同じように」とお願いするよりも、自然に生まれる人間関係を大切にしたほうが、周囲にとっても楽だということを知っているからだ。
ガンになっても、無理なふるまいを続けてしまうという人は案外多い。
何があっても人には迷惑をかけたくない。
他者に負担をかけるほうが自分はつらいという人が多いのである。
私はガンになった後、入院、退院を経て仕事に復帰し、初めて相談を受ける患者さんに「実は、私もガンなんです」と告げるようになった。
すると、多くの患者さんたちがしばしば絶句した。
同情心や哀れむ気持ちというよりも、純粋な驚き、衝撃を受ける人が多かったように思う。
50代、60代の女性からは、その場で泣かれたことが何度かあった。
私に小さな子供がいることを知っている人もいたし、息子のような年齢の医師が、不治の病に侵されてしまったことを気の毒に思ったのかもしれない。
ある70代の男性の患者さんに「実は私もステージ4のガンと診断されました。お互い、情報を交換して長生きしましょうね」と伝えたときには、固い握手をもと忌められた。