下座に生きる 神渡良平
知床半島にある西念寺の坊守をしている鈴木章子さんは、乳がんにより46歳で亡くなられました。
残されたノートにこんな詩が書かれていました。
死の問題は今始まったのではない
生まれたときからもう始まっていたのです
点滴棒をカラカラ押して青白い顔に幼さを残して歩く9歳の少年に・・・
母親に抱かれ乳を吸う力もない赤ん坊の下げられた管の数々に・・・
気がつけば私46歳
ありがたい年齢だったのです
鈴木さんはこうも書き綴っています。
交通事故で突然の死をたまわっても仕方なかったのに
がんをたまわったおかげで生死の大事について尊いお育てをいただくことができました
死の直前には、ご主人のことを詠んだこういう詩もある。
「お父さん、ありがとう。また明日会えるといいね」と手を振る
テレビを見ている顔をこちらに向けて、主人が
「おかあさん、ありがとう。また明日会えるといいね」と手を振ってくれる
今日1日の幸せが胸いっぱいにあふれてくる
そして朝は「お父さん、また会えたね」
「おかあさん、また会えたね」と恋人のような暮らしをしています。
振り返ってみると、この46年間、こんなあいさつを一度だってしたことがあったでしょうか
みんなガンをいただいて気づかされたことばかりです