ガンという病気とは

私はガンで死にたい 小野寺時夫

高度進行がんに対する治療のやりすぎはデメリットが多い、末期には十分な苦痛緩和が何よりも重要である、と私は強調してきました。
もし自分ががんになったら、がんという病気を正しく理解しなければなりません。

人体は60兆個の細胞からできており、生命を維持するために生涯に3,000回ほど細胞が入れ替わります。
莫大な数の細胞が分裂するので、元の細胞と形の変わった細胞もたくさん生まれます。
少ししか変わっていない細胞は修復されて正常細胞に戻ります。
形のひどく変わった細胞はガン細胞で、1日100万個作られますが、免疫力などですべて殺されてしまいます。

遺伝子を傷つける化学薬品、放射線、紫外線、ウイルス、たばこのニコチンなどに触れる機会が多くなると、生命力の強いがん細胞が生まれますが、それでも通常は殺されてしまいます。
ところが、これを繰り返しているうちに、より強いがん細胞が生まれる頻度が増えてきます。
一方、年齢とともに免疫力が弱くなります。
がん細胞は免疫力を司るリンパ球の目をくらまして攻撃から逃れて生き延びようと、自分の遺伝子を変えて抵抗します。
そして、このリンパ球との戦いを潜り抜けてがん細胞が生き残ると「がんの発生」です。

がん細胞は分裂を繰り返して倍々ゲームで増え続けますが、20年以上かかって30回ほど分裂を繰り返すと約10億個、直径1㎝位の大きさになる場合が多いのです。
がん告知をすると「私のがんはいつごろできたのでしょうか?」と質問する人がいますが、2~3年前に発生したということはなく20年以上前にできたのです。