ことばのご馳走 金平敬之助
福岡の市内バスに乗りました。
バスがまさに発車しようとしたときに、小柄なおばあさんが席を立って慌てて降りようとしました。
腰の曲がった人でした。
手に大きな荷物と傘。
足元もおぼつきません。
その上、床が濡れています。
「あ、危ない! バスが動いたら・・・」
その瞬間でした。
車内に優しい声が響きました。
それは博多弁の天使の声でした。
「ゆっくりでよかとよ・・ バスは動かさんから・・・」
この一言で安ど感が流れ、車内がいっぺんに和みました。
乗客みんなが、運転手さんの背に感謝の目を向けました。