今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊
やらずに後悔して、この世を去ることが一番つらい。
今の自分が絶対ではない。
間違ってもいい。
しかし、何もしなかった後悔は癒されない。
死を前にしたとき、すなわち非日常の世界に足を踏み入れたとき、本当にしたいこと、やらなければならないことが見えてきます。
私は以前、ある男性を看取ったことがあります。
初めてご自宅を訪問したとき、その方の容態が思わしくなく、残された時間が長くても1週間しかないことがすぐに分かりました。
男性には、事実婚の関係の女性がいました。
お二人は、結婚を望んでおり、過去に入籍に向けて動いたこともあったようですが、さまざまな事情から実現には至らなかったそうです。
しかし、大切な女性を残してこの世を去る日が目前に迫り、男性は「どうして、あの時ちゃんと手続きをしておかなかったのか」と、そのことを何よりも悔やんでいました。
そこで、私たちは動きました。
戸籍謄本の取り寄せなど、正式な手順を踏んでいてはとても間に合いません。
何とかしたい一心で市役所に掛け合い、どうにか婚姻届けを受理してもらえることになったのです。
さらに、レースのカーテンでつくったウエディングドレスを持参し、入籍が無事済んだことの報告と、ごく簡単な結婚式を行いました。
そのときの男性の穏やかな顔、妻となった女性の輝くような笑顔を、私は一生忘れません。