愛が支えるいのち 曽野綾子
私たちが生きていく上で何が必要かと考えますと、まず言えるのは、人は受けるだけでなく、与えないといけないということです。
たとえば、子どものときは受けることばかりです。
赤ちゃんのときにはお母さんに抱かれて、おっぱいをもらう。
少し大きくなれば、ランドセルを買ってもらって、お小遣いをもらってと、「もらって」が続きます。
そして大人になり、月給をもらうようになってはじめて、お母さんやお父さんに時計を贈ったりするようになります。
つまり、ここでようやく、受ける側から与える側にまわるのです。
初代教会をつくった聖パウロの言葉に、「受けるよりは与えるほうが幸いである」とあります。
つまり、人間の尊厳や幸せは与えることにあって、受けることではないというのです。
もらうのが当たり前で、あげるのは損だと考えていると、いつまでたっても、いのちを生み育てるという大人の側に立つことはできません。
永遠に幼児性が続くと言ってもいいでしょう。