もしもの時の会話を積極的に

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

ガン患者になった直後は、それまで妻や子供たちと過ごした時間が少なすぎたことを痛切に反省したが、コロナの影響で学校が休校となり、1日中家で遊んでいる子どもたちを見ると、つい「たまには勉強しなさい」と、いつものうるさい親父発言が出てしまう。
それが現実だ。
ただ、しっかりと話ができるうちに、私は家族に治療や自分の最期について「もしもの時の話し」を積極的に伝えるようにしている。
もしものときどうする、ということをはっきり決めなくても、対話を積み重ね「なぜそう思ったのか」という思考のプロセスを共有しておけば、いざというとき「あのとき、お父さんはこう言っていたよね」「お父さんだったらこうするよね」と、残された家族が自信をもって、ものごとを決められると思うからである。

日本では、最悪のケースを話題にすることが避けられる傾向が強い。
「縁起でもない」「そんなことは考えたくもない」という理由で、可能性を直視しないのである。

この世に生を受けたからには、必ずやってくる「命の終わり」に備えているか否かで、いざというときの本人や家族の負担はずいぶん軽減されるのに。