むやみに抗がん剤治療をした挙句に・・・

私はガンで死にたい 小野寺時夫

会社員のNさん(65歳)は、血痰が出て市立病院を受診し、進行肺腺がんと診断されました。
医師から、「すでに両肺の間に転移があり、手術適応はありません。抗がん剤治療も期待できないので元気なうちにやりたいことをするのが最もいいと思います」と言われました。

しかし、治療をあきらめきれないNさんは,インターネットで肺がんの名医の大学教授を見つけ受診したところ、抗がん剤治療を勧められました。
4週間おきに1週間ずつ入院治療をするようになりました。
治療後は吐き気や食欲減退、身の置き場のないだるさに襲われ、回復するのに3週間もかかり、回復したと思うと次の治療が始まるといった調子でした。
体重は1か月で2キロずつ減りました。
効果が思わしくないので、抗がん剤の種類が何度か変わりましたが、4か月後には脊柱骨転移を発症して歩くことが困難になり、5か月目には右手がしびれ、会話ができなくなり、脳転移と分かりました。

知人の勧めでホスピスに入院した時は意識が混濁しかけており、約2週間後に亡くなりました。
仕事一途の方で、奥さんと南米旅行を4年も延期したまま、苦しい抗がん剤治療の連続で死を迎えたのです。