看護師・僧侶 玉置妙憂さん
私の知人ですが、子育てをしながら、好きなこともすべて封印して、何年間も夫の介護をしていた人がいます。
ある日、彼女は数年ぶりに大好きな歌舞伎を観に行くことにしました。
もちろん一時的な介護を頼んで、きれいな着物を装って楽しんできたそうです。
ところが近所で「ご主人が大変なのに、着飾って歌舞伎を観に行ったんですって!」という噂が広まったというのです。
「出かけなければよかった・・」と後悔する彼女に、私はこのような言葉をかけました。
「行って正解だったのよ。だってその後、ご主人に一層やさしくできたのでしょう」
「まず自分のコップを幸せの水で満たしていけばいいのよ。自分のコップが一杯だから、他の人に幸せを分けてあげられるのだから」
彼女は涙を流した後、「歌舞伎を見て、数時間でも心の底から楽しんでよかったのよね」と答えてくれました。
その後は、歌舞伎のことを思い出すたび幸せな気分が蘇り、再び介護を続けられたそうです。